将棋プロ棋士紹介⑧ 糸谷哲郎八段

将棋プロ棋士紹介

トップレベルの『文系』棋士

*2018年11月25日更新

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糸谷哲郎八段

日本将棋連盟より引用

棋士番号 260
生年月日 1988年10月5日(30歳)
出身地 広島県広島市
師匠 森 信雄七段
竜王戦 1組
順位戦 A級

*2018年11月25日現在

今回は糸谷哲郎八段をご紹介いたします。

西遊棋」という関西将棋会館所属の若手棋士・女流棋士達によるユニットを立ち上げ、

精力的に将棋普及に尽力されている糸谷八段。

一体どんな方なのでしょうか?

2歳で漢字が読めた?

 

森信雄の写真あれこれより引用 17歳四段昇段時。

糸谷八段の小学生時代の「将棋」の逸話はそれほど残っていません。

第23回小学生将棋名人戦で広島県代表で出場、佐藤天彦名人に勝ったけれども、

船江恒平六段には負けて、準決勝進出出来なかったということくらいしか

「将棋」に関する情報は得られませんでした。

しかし「将棋世界2007年1月号」に掲載されていますが、

糸谷八段へのインタビューで語られるご自身の幼少期の様子は、

「天才性」を感じさせるものです。

 

糸谷八段は5歳頃からルールをお父さんに教わって、将棋を指し始めているそうですが、

なんとその時から谷川浩司九段の入門書を読んでいたそうです。

実は2歳頃から漢字はかなり読めていたとのことで(!)、

5歳から普通に入門書を読みこなしていたというそのエピソードからは

糸谷八段の凄さが伝わってきますね。

また、このころから読書好きだったらしく、

家が本で潰れそうになったという祖母(!)の影響を強く受けているのではないかと

ご本人は述懐しております。

…糸谷八段の強烈な個性は、このころから形成されていたのですね。

 

なお糸谷八段は、1998年に6級で奨励会に入会。

2006年には第38回奨励会三段リーグで14勝4敗の1位の成績により、

前回ご紹介した中村太地王位とともに四段に昇段しております。

 

新人時代とNHK杯での活躍

日本将棋連盟から引用

糸谷八段はプロ入り後のデビュー戦で、

いきなり橋本崇載八段(当時六段)に勝っております。

終局直後に橋本八段が「強すぎる。怪物だ!」と叫んだことから、

ニックネームとして「怪物」「怪物くん」と言われるようになりました。

「怪物くん」…今はあまり使われなくなりましたね。
2010年代半ば頃からは一部のファンの間で
「ダニー(先生)」という愛称も使われるようになってきたので、
一般メディアでもこちらの愛称を用いることが多くなってきています。

加えて、三段と四段をまたいで出場した第37回新人王戦で優勝しています。

勢いをそのままに第59回NHK杯では、3人の永世称号資格者

谷川浩司=十七世名人資格者、森内俊之=十八世名人資格者、渡辺明=永世竜王資格者)

を次々と破り、永世六冠の資格を持つ羽生善治竜王(当時名人)と決勝で戦いました。

結果は敗れて準優勝とはなりましたが、その早指しぶりと、

棋界の大物に対して物怖じしないその姿勢で、「怪物糸谷」の名を世に知らしめました。

 

竜王獲得

日本将棋連盟から引用 広島市民賞受賞時の写真

2014年9月8日には、第27期竜王戦挑戦者決定三番勝負(対羽生善治戦)で勝利し、

森内俊之九段(当時竜王)への挑戦権を得ます。

同年12月4日、第27期竜王戦七番勝負で森内俊之竜王に勝利し、

4勝1敗で番勝負を制して竜王の座に就きました。

自身初のタイトル獲得でしたが、そのことに加え、広島出身の棋士がタイトルを持つのは

升田幸三実力制第四代名人以来、なんと56年ぶりとのことです。

糸谷八段は、名人以来のタイトル獲得という快挙を成し遂げ、

将棋の普及と振興に貢献した功績が高く評価され、広島市民賞を受賞されています。

 

…私はその当時のことをよく覚えていますね。

糸谷竜王誕生に加え、今泉健司新四段の快挙も同時期だったものですから、

この2つの明るいニュースのお陰で、広島が湧いていたことを思い出します。

その頃広島は8月の豪雨災害の直後であったので、

この明るい話題で救われた方も多数いらっしゃったことでしょうね。

将棋以外でも…

西遊棋Webより引用

 

その後糸谷八段は竜王のタイトルを失うものの、王座のタイトルの挑戦権を得たり、

順位戦A級昇級を果たすなど、将棋界で華々しい成果を上げています。

…しかしながら、

実は将棋以外でもご活躍されてまして、以下にその事例を上げていきます。

 

  • プロ入りから1年後の2007年、大阪大学文学部に合格しています。
    現役プロ棋士が日本の国立大学に合格・進学したのは初めてだとのこと。
    哲学・思想文化学専修に所属し、卒業後はさらに大学院に進学。
    大学院在籍中に竜王位を獲得し、
    棋界初の異色のタイトルホルダーとなっています。
    一時期将棋専念のため休学していましたが、
    後に復学しまして、ドイツの哲学者ハイデッガーを研究しました。
    2017年3月に大学院修士課程を修了し、
    修士(文学)の学位を授与されています。
    その時の修士論文は「現存在と存在者の関わり」。
    ハイデッガー研究者の米国人哲学者、
    ヒューバート・ドレイファスの存在論をテーマにしたものだそうです。
    ちなみにタイトル獲得歴のあるトップ棋士が、
    修士以上の学位を授与されるのは初めてです。

 

  • トレーディングカードゲームの一つである
    マジック・ザ・ギャザリング(MtG)を嗜んでいらっしゃって
    2010年の日本選手権ではベスト16に入るほどの腕前を持っています。
    2015年にはベルギーのブリュッセルで開催されるプロツアー
    「タルキール龍紀伝」に「竜王」として世界大会に特別枠で招待されています。将棋とMtGについて「対人ゲームとして共通する部分は多い」とおっしゃり、「相手の行動を読んで、基礎を覚えれば、相手をミスに追い込める。
    最終的に『相手をミスに追い込む』というのが対人ゲーム」と語っています。

 

  • 2017年7月には、
    ポケモンカードゲームの新拡張パック「ひかる伝説」の発売に合わせて行われたシールド戦
    (未開封カード等を即興でデッキ構築する限定戦)
    に参加しています。
    ポケモンカードゲームは初体験
    だった上に、
    ポケモンワールドチャンピオンシップスの
    チャンピオン経験者なども参加するという悪条件ながらも、
    なんと優勝を飾っております。

 

…糸谷八段はその類まれな頭脳を駆使し、

将棋のみならずトレーディングカードゲーム界でも旋風を巻き起こしそうです。

加えて哲学にも造詣が深いということなので、

今後マルチタレントとしても、色々なメディアでのご活躍が想像できますよね。

 

当ブログは糸谷哲郎八段を応援し続けます!

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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