将棋 なんじゃこりゃ用語⑥ 投了(その2)

将棋 なんじゃこりゃ用語

『将棋をやっている子供は、なぜ「伸びしろ」が大きいのか?』

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羽生竜王の推薦文

私は「投了」にはこだわっていまして、それには訳があります。

安次峰(あじみね)隆幸著

『将棋をやっている子供は、なぜ「伸びしろ」が大きいのか?』という

素晴らしい本に出会っているからです。

 

この本の冒頭、羽生さんの推薦文があるのですが、

テーマが「負けました」と言うことの大切さと聞いて、やはり、安次峰先生は目の付け所が違うなと思いました。 通常ならば集中力とか落ち着きを持たせるとか、そんな視点から入ると思うのですが、もっと深い所を将棋の中から見出して頂いたようで、それは将棋の奥深さでもあるのですが、安次峰先生自身の奥深さでもあって、だからこそ、この本の濃密さを表現できるのでしょう。

『将棋をやっている子供は、なぜ「伸びしろ」が大きいのか?』より引用

…と、羽生さんから大絶賛。

勝つための棋書は数あれども、「負けました」を中心に語られる本は、

安次峰さんの著書以外ないでしょう。

そしてそのことは、この本の魅力でもあります。

 

安次嶺隆幸さんとは?

この本の著者である安次嶺隆幸さんとは、いったいどんな方なのでしょうか?

安次嶺隆幸

安次嶺隆幸

東京福祉大学教育学部教育学科専任講師(元私立暁星小学校教諭)。公益社団法人日本将棋連盟学校教育アドバイザー。 2015年からJT将棋日本シリーズでの特別講演を全国で行う。中学1年生のとき、第1回中学生名人戦出場。その後、剣持松二九段の門下生として弟子入り。高校、大学と奨励会を3度受験。アマ五段位。 主な著書に「子どもが激変する 将棋メソッド」(明治図書)「将棋をやってる子供はなぜ「伸びしろ」が大きいのか? 」(講談社)「将棋に学ぶ」(東洋館出版)など。

*日本将棋連盟より引用

もともと劒持松二九段門下の奨励会員で、プロ棋士を目指していた方です。

現在アマ五段ということで将棋がお強いのはもちろんですが、

将棋という文化・競技に関して、深い洞察力をお持ちの方でもあります。

もともと小学校の教員をされていただけあって、将棋を指す子どもたちに対し、

とても深い愛情を持っていることが著書のあちこちに散見されますね。

なお、現在将棋連盟の学校教育アドバイザーであり、

各地で精力的な公演を行っている方でも知られています。

 

本の内容

さて、本の内容を簡単にご紹介しましょう。

この本のエッセンスは、実はまえがきに集約されています。

あんなに強い羽生名人も百戦百勝ではありません。羽生名人だって、負けることはあります。そんなとき羽生名人といえども、負けたらちゃんと「負けました」と言っています。いや逆に、羽生名人は高い精神性に到達しているからこそ、潔く「負けました」と言えるのです。 負けたら悔しいのは当たり前です。でも、その気持ちを折りたたんで、折りたたんで、葛藤を乗り越えて、羽生名人は「負けました」と言うのです。 ただ、そんな羽生名人の敗戦も、将棋を始めたばかりのこどもたちの敗戦も、同じ将棋です。「負けました」と言うとき、こどもたちも羽生名人とはレベルの違いこそあれ、同じように悔しさを味わい、しかしその気持ちを折りたたんで自分から負けを認める勇気を発揮しているのです。つまりこどもたちは、将棋を指すことを通して、ちょっぴり羽生名人のような精神世界に近づいていると言ってもいいでしょう。

『将棋をやっている子供は、なぜ「伸びしろ」が大きいのか?』より引用

称号(敬称)は当時

 

「負けました」と言うとき、プロ棋士と同じ精神世界に近づくという物言いは、

とても素晴らしいですね。

このことを言葉を踏まえると、

子供の「なぜ『負けました』と言わなければいけないの?」という問いに、

その子の好きなプロ棋士になぞらえて…例えばその子が藤井七段が好きなら、

「藤井七段も、とても悔しいだろうけど負けましたって言っているよ。」

「そして負けましたって言う度に、君はその藤井七段に近づくんだよ。」

…と、言ってあげることが出来ますよね。

 

もちろんこうしたこと以外の「負けました」という意味合いの説明に加え、

将棋の心構えや戦略・戦術に関することなど、この本の随所に書かれていますので、

子供の持つ将棋の素朴な疑問に対する答えを見出すことができると思います。

技術書ではないので、お子さんの棋力アップの役には立たないかと思いますが、

将棋を指す子供を持つ全ての親御さんに、

是非とも読んでいただきたい将棋の本となっています。

 

将棋を指す全ての人々に…。

話は変わりますが、最近ネットで将棋を指していると、

とても不愉快なことに出くわすことが増えました。

「投了」をしたくないがために、すでに自玉が詰んでいるにもかかわらず、

時間だけ浪費させて「時間切れ負け」を目指されたり、

自玉を自ら駒の利きの所に差し出して、自爆して負けたりと、

およそリアル対局では考えられないようなことが起こります。

悔しいのは分かりますが、

なぜお相手は投了すらできないのかと考える度に、

怒りを通り越して悲しい気持ちになります。

 

本当はそうした「投了」することすら拒むような将棋指しにこそ、

この本を読んでいただきたいと毎回思うのですが、

将棋を単なるゲームの一種としか考えないような人々には、

決して伝わらないだろうなぁ。

 

「投了」を素直にできる・できないで、将棋に対する真摯な姿勢が試されます。

「投了」に対して少しでも苦々しく思っている方は、

ぜひこの本を読んで、「投了」に対するモヤモヤを払拭していただきたいです。

みんなが気持よく将棋を指せる環境づくりは、

次代の将棋指しにとっても、とても大事なことだと私は考えていますので。

 

安次嶺隆幸さんに興味を持たれた方は、日本将棋連盟に多数寄稿されたコラムをご覧になると良いかもしれません。以下にリンク先を貼っておきます。
安次嶺隆幸のコラム一覧↓
安次嶺隆幸のコラム一覧|将棋コラム|日本将棋連盟
日本将棋連盟の安次嶺隆幸のコラム一覧のページです。日本将棋連盟は伝統文化としての将棋の普及発展と技術向上や将棋を通じた交...

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

コメント

  1. ぶりあん より:

    あーいますいます
    まともに投了できないヒト(・x・ ).o0○
    ああはなりたくないですよねぇーそゆかたは速攻BLです。

    • うに うに より:

      「まともに挨拶できない」と「まともに投了できない」は、24ブラックリスト入り案件の判断材料になりますよね(^_^;)

  2. ころも より:

    GWに新宿将棋センターに行ったのですが、圧倒的劣勢の場面で相手(二段の方)が
    「ああ、もうダメダメ!」と言いながら持ち駒を全て盤上にぶちまける、という
    とても悲しい投了をリアル対局でやられました。

    将棋を指す人間として悔しい気持ちはよく分かるのですが、それでも「負けました」「参りました」
    の一言は欲しかったですね…。

    • うに うに より:

      嗚呼…。
      「3月のライオン」の松永七段と同じことをリアルでされてしまったのですね(T_T)
      https://pbs.twimg.com/media/C4yt2evVcAA1_Vy.jpg

      負けを認められないんだったら、最初から将棋指すなよ!って思う瞬間でもあります。
      こうしたことをする人が減るといいんですが、ネット将棋の興隆のせいで、むしろ増えることが予想されますよね(^_^;)