将棋 なんじゃこりゃ用語⑨ 捌く(その2)

将棋 なんじゃこりゃ用語

言語化はひどく難航…

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整理してみる…

とりあえず「捌く」という用語の性質を、いったん整理してみたいと思います。

 

  1. 中盤で使われる。
  2. 居飛車で使われることもあるが、ほぼ振り飛車用語。
  3. 大駒中心の動きが重要になる。
  4. 「軽い」動きに対して使用される。
  5. 駒の損得は関係がないときも多い。

一応5つに分けて見ました。

それぞれ検証してみます。

 

中盤で使われる

「捌く」という言葉は、中盤にこそ使われます。

序盤・終盤で使っている例は、あまり見ませんね。

 

さて、中盤というのはどんな状態かといえば、対局者の囲いや攻めの狙いがほぼハッキリした状態のことで、お互い「思い通りにさせませんよ。」という攻防が展開されている局面です。

お互いの思惑がごちゃごちゃと絡み合って、それを示すかのように駒の配置も複雑になってきますよね。

「捌く」とは、こうした複雑化した局面をスッキリさせなおかつポイントを稼ぐ一連の手というニュアンスがある気がします。

その逆が、「泥沼化」ですかね?(笑)
米長永世棋聖の十八番で「泥沼流」とも言われてましたね。

 

居飛車で使われることはあるが、ほぼ振り飛車用語。

「捌く」という言葉は、基本的に振り飛車で使われることが多いですよね。

とりあえず「捌く居飛車」といった棋書が検索に引っかからないところをみると、基本は振り飛車に使われることが多い言葉だということが分かります。

 

そこで振り飛車の典型的な戦いをおさらいしてみると、対居飛車(対抗型)の戦いとしては、「堅陣(主に美濃囲い)に囲って飛車を縦横に使い、終盤に一手差で勝つ。」といったところでしょうか。

堅陣というところがポイントで、短手数で十分な固さを誇る美濃囲いに組めることが、振り飛車の最大の利点ですから、その序盤の優位性をキープしながら戦うのが基本となります。

なお居飛車側が、振り飛車より固く囲った場合には、観戦記等でも居飛車側に「捌く」という表現が出てきていたのは興味深かったです。

そして飛車を振ったことによる弊害が、大駒の接近という状態です。

この悩みの種である大駒の接近を、うまく解消させるという意味合いも、「捌く」には含まれている気がします。

三間飛車の場合↓

 

大駒中心の動きが重要になる。

振り飛車において大駒の接近のなにが困るかといえば、大駒同士でその利きを殺しあってしまうということです。

せっかくの長距離砲である大駒の利点が失われがちになってしまいますから、これをなんとか解消させたいんですね。

それに加え、仲間の小駒・金駒(特に銀)が近くにいると、大駒が使いづらいので、これもなんとかしたい。

自分の駒を捨てても大駒の利きを優先させた時は、「捌いた」と表現しますよね。

 

「軽い」動きに対して使用される。

大駒の使い方としては「遠方から睨みを利かせる」ことと、「大駒自ら動く」という2つの使い方があると思います。

前者の使い方を重視する場合は、必然的に大駒の利きの前に自分の駒が出て来るので、「重い」使い方になりますが、後者の使い方をする場合は、なるべく大駒の前に駒がない方がいいです。

そこで駒を交換したり、場合によっては駒を捨ててまで大駒の通りをよくする…つまり「軽く」する必要があります。

こうした駒運びも「捌く」とされていますよね。

 

駒の損得は関係ないときも多い。

駒の損得は局面の形勢判断をする際、かなり重要な要素になってきますが、それを差し引いた形でも、駒の利きの効率化を行った場合も「捌いた」と言えます。

駒を捨てたことにより手得をし、その間に有利な局面を築く考え方ですね。

極論を言えば、全く使えていない大駒を切ることによって、自軍の駒が躍動するような場合も「捌く」という表現になります。

 

まとめてみる…

…つらつらと書いてまいりましたが、ここでまとめてみます。

文章として

主に振り飛車に使われる「捌く」という言葉は、

中盤の局面で、駒を交換したり駒を捨てたりすることによって、駒全体の効率化を促し、大駒の機動力をあげる行為のことであって、盤面で起きている駒の渋滞を、一気に解きほぐす一連の流れを指します。

 

その場合、相対的に自陣が相手陣より固いということが前提となりまして、いくら駒を効率的に使えるようになっても、相手陣が打ち破れないほど固くなっていては、「捌き」で得た利より、駒の損得の方が重要になってくるためです。

振り飛車中心に使われるこの「捌く」という言葉は、振り飛車の戦い方の基本に根ざしたモノなので、大駒の睨みを重要視する居飛車の戦い方とは、根本的に相い入れない感覚なのかも知れません。

 

ただ近代将棋においては、居飛車と振り飛車両方の感覚を持ちあわせることが重要になってきているので、居飛車の将棋にも「捌く」という用語が使われるようになってきているのも、不思議なことでは無いのかも知れませんね。

 

感覚として

一応私の、「捌き」に対しての感覚も述べておきましょう。

色々「捌き」に関してネット等で調べてみましたが、売り捌く」という感覚が最も評価が高いような感じを受けました。

ただ私の見解はそれとは違っていて、渋滞している交差点を交通整理して、うまく車を「捌く」感じなんですよね。

それぞれ行きたい方向が違う車を、手旗信号等で上手く導いて(捌いて)あげる。

そうすることによって車(駒)は車(駒)の役割を果たすことができ、交差点にも流れが生じる……そんな感じです。

 

終わりに

2回に渡って「捌く」という将棋特有の用語を説明してまいりましたが、いかがだったでしょうか?

私の棋力と文章力が至らないため、上手くお伝え出来て無いかも知れません。

 

…もし、「ここは違うんじゃないか?」とか、「こう表現したら分かりやすいかも。」等ございましたら、コメント等でお知らせいただけると幸いです。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

コメント

  1. 捌くは、居飛車、振り飛車関係なく使われているような気がします。

    特に棒銀とか、銀を捌けないと負けとか、立ち往生している銀などと使われているかと。

    あと、歩以外の駒ですべてに使われると思います。

    千駄ヶ谷の受け師こと木村九段は、玉の捌きが有名ですね^^
    大駒の捌きは、昔からあって説明しなくてもわかる方多いかと。

    金銀は、振り飛車でいうなら、大山先生とか特にそうですけど、左にいた金が
    いつの間にか右に寄ってくっついてとんでもなく固くなることもしばしば(笑)

    銀は、単独では捌くとは言いませんが、盤上の駒を相手の駒に取らせることによって、
    自分の駒台に乗ることを捌くという人もいらっしゃると思うので、
    そのあたりは微妙ですね。

    桂は、跳ね違いの桂、天使の跳躍(2段跳ねすること)、不成の桂、桂つるしの筋etc.
    様々な中終盤での活用法があり、これらも捌くというのかなぁ?

    香車は、初級者があまり「捌けない」駒のひとつですが、
    角と連携して香を交換したり、交換した香車を飛車の頭に置いて、
    玉頭戦、振り飛車なら美濃囲いの上に打って、左美濃攻略にするなど、
    まっすぐにしか進めないことを十二分に発揮してこれらも捌くに入るかもしれません。

    なお、一部の駒の活用法等は、今までの棋書等から参考にしましたので、
    あくまで、個人的な見解ということで…

    長文失礼しました。

    桂(かつら) twitter:@keima3

    • うに うに より:

      桂さん、とても的確なコメントありがとうございます(^^)
      「捌く」の言語化がいかに難しいかということを、嫌というほど知りました(^_^;)
      本当に感覚的な言葉なので、どこで線引きするかの加減が、特に難しいんですよね。

      今回は実験的に「狭義」に近い方を選択して解釈をしたつもりなので、
      表現が足らない所があったのは、申し訳なく思っております。
      確かに、歩以外の駒に「捌く」という表現を使いますよね。
      木村九段の玉捌きとか、完全にその辺りが抜けておりましたよ(^_^;)

      いやーホント、「捌く」を説明するのって難しい!
      まあでも、これに懲りずに色々用語説明していきますので、
      これからも、ご指導御鞭撻の程よろしくお願いいたしますm(_ _)m